カトウのブログ

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物語の力

先週のNHKクローズアップ現代」を見ていたら、「物語の力が社会を変える」という内容で放送されていました。そこで語られていたのは、物語を共有することが人々をつなぎ、動かし、一人一人の当事者意識を高めるということでした。カリスマリーダーに頼るのではなく、自分たちで社会を変革するにはどうすればいいのか?その可能性は、まずはじめに自分の物語を語るという事であると。そうすることによって共感し共有が生まれるとう話です。ただ、そういわれても、自分にはそんな物語なんてないよって思ってしまうんですけどね。

 

お正月、NHKで「ドキュメント72時間」という番組の過去の放送分がまとめて放送されていました。この番組は3日間カメラを据えて、そこに行き交う人を捉え、時に話を聞くというドキュメント番組です。

カメラが向かうのはファミレスだったりコインランドリーだったりと町に普通にある場所が主。この日放送されていたのも、健康ランド、ファミレス、大阪西成の貸しロッカー、真夏の墓地谷中霊園、コインランドリー、スポーツジム、旅行代理店、鳥取砂丘でした。

まず新鮮だったのは、よく知っている場所のようでいて意外に行った事がないということ。ファミレスはたまに行きますが、それ以外はほとんど行った事もないし利用した事もない。自分の行動範囲ってかなり限定されてたんだなと、改めて気づかされた思いでした。

 

ただ、逆にそこに来る人達にとっては当たり前の場所になっている。コインランドリーもファミレスももちろんスポーツジムも。健康ランドなどは毎日来ているという人もいるし、週に何度も利用しているという常連も多い。自分は一度も行った事がないところに、毎日のように行っている人がいるんだな。となんか複雑。特別自分と違う人とは感じないし、きっと接点がないだけで、同じ様な生活をしてるはずなのに。なんか不思議な感じでもありました。

 

この「ドキュメント72」という番組は、そこに来ている人たちに出来るだけ話を聞こうとするのですが、はじめはあまり語りたがらない人でも徐々にいろいろ話してくれる人もいて、そこからぐっとその人だけの世界に入っていくのが面白くて魅かれるところ。まさにそこにそれぞれの小さな物語を見る事ができる。何故そこに通うのか?を聞いてみただけでも事情や理由あって、そんな話を聞くだけでも当初抱いた印象が変わってしまう。胡散臭そうに見えていても、話を聞くとまったくそうじゃなかったり。

 

当たり前だけど、人それぞれ事情や理由があるからそこに行く。転勤だったり、別離だったり、病気だったり、経済的な理由だったり、はたまた単純に落ち着けるとか。意外な場所で意外な理由に出くわす事もあります。ファミレスでは単純に今は弁当を買うより、安いから利用すると予想通りの理由を話すサラリーマンもいれば、悪ガキ風のグループのひとりからは、就職して親に迷惑をかけた分恩返しがしたいと、みた目と話のギャップにびっくりしたり。一見恐そうな雰囲気の年老いた夫婦は不景気で寿司屋を辞めて、どこかの食堂で働いているという話から、昔の旦那の浮気の話や子供が出来ない事情まで、けっこう深いところまで話してくれたりして。中年のやけに楽しそうに盛り上がっているグループのひとりは癌を告知されているとか。話を聞くと第一印象とまるで違うことが多い意外さ。自分の物語って語りがらない人が多いと思うけど、それぞれの話をきくと自分とはまるで違う世界があるのが興味深かった。そう考えると、確かに物語が社会を変えるってあるかもしれないと思った正月でした。