カトウのブログ

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映画「別離』

イラン映画の『別離』(2011年イラン・アスガル・ファルハーディー監督)を見ましたが、とても良かったです。ベルリン国際映画祭やアカデミー賞でも賞をっているという作品とのことですが、最近見た中ではピカイチの映画でした。

 イランの社会情勢はよくわからないのですが、女性の社会進出に介護問題、貧富の差に宗教などいろいろな問題をはらんでいるように思いました。

ただイランの社会にある事情や問題を知らなくても引き込まれてしまう力があるのは、人間の描き方の深みだと思います。心が離れかけている夫婦とその子供、それに介護の仕事にくる夫人とその夫。そのひとりひとりが見事に描かれていました。

 

黒澤明の「羅生門」のようなと書いていた映画評がありましたが、どっちがよくてどっちが悪いと言いがたい人と人との絡み合い。どの人も完全じゃないけど、どの人にも事情がある。監督自身も登場する「キャラクターのパースペクティブは、みんな何かしらわたし自身のそれを反映しているのだと思います」とインタビューに応えていました。

 

それぞれのキャラクターをとおして、ある意味複雑な家族関係と人間関係を描いているのに、すごく見やすいのは推理仕立てのようになっているからでしょう。犯人を探し出すというわけではないけど、そのときなにがあったのか?みたいなのが徐々にあぶり出されるように出来ているので、特に後半はかなり引き込まれます。

そして、ラスト。見た人は必ず自分なりのラストを想像するのじゃいかな?そんな余韻を残してくれる映画でした。