カトウのブログ

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「鬼龍院花子の生涯」は情の映画なのかな

五社英雄監督の『鬼龍院花子の生涯』(1982年)、思った以上に好きな映画でした。特に夏目雅子の演技力と存在感には魅かれました。亡くなったのが27歳らしいので、今更ながらに何とも惜しかったなと思います。

 

内容は、なんて言えばいいのか「情」の映画と言えばいいのか。とにかく仲代達矢演じる侠客の親分鬼政のワンマンさと異常なまでの情が度を超していて凄い。なのでその分、夏目雅子演じる松恵との知性と品が際立つ仕掛けになっています。

 

面白かったのは、そんな鬼政が喧嘩(殴り込み)に出かける際に、ラジオから広沢虎造浪曲「清水の次郎長」が流れるシーン。外出から戻った鬼雅が何故か唐突にラジオのスイッチを捻る(何故、今ラジオ?若干不自然さはありますが)と「清水の次郎長」の浪曲が流れるという仕掛け。鬼雅は侠客の親分で悪いことも数々してきて恐れられているけど、根っこは悪人ではなく弱きを助ける人間でもあるという立場をストレートに演出したのでしょう。(まあ、それ以上に酷いことをしまくっているので、次郎長のBGMくらいじゃ追いつかないかもしれないけど)

 

それと意外だったのは、夏目雅子が「なめたらいかんぜよ」とドスの効いた啖呵を切るシーン。当時CMで頻繁に流れていましたので、記憶していましたが、あれはヤクザの立ち回りで発するのかと思いきや実は夫の親戚に向かって切る啖呵だったんですね。意外でした。でも、痺れましたね。啖呵のときの声も抜群だしグッときた。どうも、この役、はじめは大竹しのぶにオファーを出して断られたので夏目雅子になったらしい。ほんと夏目雅子でよかった。