カトウのブログ

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蠅の王

映画『蠅の王』(1990年 イギリス ハリー・フック監督)を観ました。ウイリアムゴールディングの小説が原作の映画です。ウィキペディアによると「蠅の群がる生首を蠅の王と形容」生首が豚であるのは「七つの大罪のうちの暴食」を象徴するのが豚であるからだということでした。

 

この映画は少年24人が飛行機の墜落によって無人島に漂着して、やむなくそこで生活をしていかなければならなくなるという物語です。海もきれいで、毎日よく晴れ渡ってリゾート地としてはとても良さそうなところ。ただ、この天国のような場所で繰り広げられるのは、なんとも醜い展開でした。天国のような青い海と地獄のコントラストがものすごい。色でいえば補色関係。互いに引き立て合いながら刺激し合うみたいな。そんな危ういバランスの中で進行していくのが、この映画のうまいところかもしれません。

 

観てる方としては、いろいろすったもんだあるんだろうけで、良い経験をして終わるという、ある意味大人の階段を登って成長するというストーリーを期待していたのですが、話はそんな事に収まらず、あまりにも後味の悪いものになっていました。

子供の世界でありながら、意見の対立。思想の違い。人間の本性。なんて事を考えてしまいます。極限状態では、何をどう選択するのか。何かを信じ続けるのか。あるいは自分で切り開くのか。

 

今の日本だって何だか2つに別れて、危なっかしい感じになってる感じがしますし。世界はもっと恐ろしい展開になってるのかもしれない。結局この話もそいうことなのか?と思ってしまいました。

 

主人公の少年は利発で男前、しかも嫌みがなく控えめなところもある。いかにもヒーロー的で感情移入をしてしまう。でも、その少年がどんどん追い詰められていく。だから観ていて辛くなる。

最終的に主人公の唯一の仲間として支えてくれたのは太った眼鏡の少年(知的だが贅肉の付き過ぎで、いかにも現代人っぽい)だけでした。そして、その太った少年が追い詰められるいく中、ぽつんと呟いたのが「何で大人と同じ事をしているのにうまくいかなんだろう」という印象的な言葉でした。

たしかに、お前ら間違ってないのになと言いたくなります。

ただ、野蛮に無人島で生きて行く覚悟を決めて動物を殺し、仲間さえも殺して生きる少年たちを観ていて、この逞しさが正解なのかも?と考えてしまいそうになる自分もいて、そういう意味でもちょっと恐い映画ではありました。